モリスの活動は欧米に、また日本にも民芸運動などに影響を与えたといわれています。今日に至るまでモリスのデザインは根強い人気を保っており、日本での人気の契機となったのは、1989年に開催された「ウィリアム・モリス展」です。ブレーントラストが組織運営を行ったこの展覧会では、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館の所蔵作品を中心にステンドグラスや家具、織物から壁紙、本、さらにはその仲間たちの作品を含む117点が一挙に公開されました。同展は伊勢丹美術館（東京）と大丸ミュージアム梅田（大阪）の2会場で開催され、日本では戦後初めて、デザイナーとしてのモリスの活動を総合的に紹介した展覧会として多くの来場者が集まり、高い評価を得ました。

その後もブレーントラストの組織運営のもと、日本各地でモリスを紹介する展覧会の開催が試みられてきました。2004年にはモリスとアーツ・アンド・クラフツ運動の関わりを焦点とした「ウィリアム・モリスとアーツ＆クラフツ」展、翌2005年から2006年にかけてもモリスのデザインを分野ごとに紹介する「ウィリアム・モリス」展、2008年には「モリスが先導したアーツ・アンド・クラフツ：イギリス・アメリカ」展が開催されました。こうした継続的な展覧会の実施と共に、数々の書籍が出版され、モリスの人物像ならびに作品が今日では日本各地で認知されることとなりました。

さらに2017年からは、これまでの展覧会では語られなかったモリスの少年期から、晩年までの生涯とその創作の関係を探る、新たな「ウィリアム・モリス」展が開催されています。これら一連の展覧会はモリスの思想と実践を広く伝え、モリスに対する理解をより一層深めることに貢献しています。

1989年に開催された「ウィリアム・モリス展」の成功を契機に、モリスの図柄を現代の製品に甦らせるという構想がブレーントラストにより計画されました。当初は片倉工業と、後に伊藤忠ファッションシステムと共同し、V&A ウィリアム・モリスの商標のもとファッション・家庭用品・文具などの分野で商品が開発され、百貨店を中心に全国で販売されました。契約終了に伴い、現在はブレーントラストにて、主にミュージアムグッズとしてモリス関連製品の開発が続けられています。ブレーントラストは広範囲の分野にわたって「ウィリアム・モリス (William Morris)」の商標権を登録・取得しているため、新商品を開発される事業者に対して商標権や図柄写真の提供も行っています。